高校生の研究テーマで使えるカラメル化について紹介します。
カラメル化とは何か
カラメル化とは、糖類を加熱することにより起きる複雑な酸化反応のことです。
糖類を180℃ほどで加熱すると、脱水や酸化を経て褐色物質であるカラメルが生成します。
糖の種類によってカラメル化が起こる温度は異なります。
反応機構はまだよくわかっておらず、重合したフランや4分子脱水したグルコースが含まれると考えられています。
カラメルの推定構造
(キャラメル - Wikipediaフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用)
似たような反応にメイラード反応というものがあります。
こちらは糖だけの反応ではなく、糖とアミノ酸を加熱した時に起きる反応です。
カラメル化をテーマにする利点
- 必要な材料が主に糖類のみ
- あまり知られていない
- 反応が複雑でわからないことが多い
の3つを挙げました。
1.必要な材料が主に糖類のみ
前述したように、カラメル化は糖の反応なので、加熱器具と糖があればできることが分かります。
ほとんどの高校には糖類が存在するはずなので、材料が無いという理由ですぐにはできないといったことにはならないでしょう。
また、糖類は安価で安全な化学薬品の一つであるところもポイントです。
2.知名度が低い
コーラなどの成分表に「カラメル色素」という表記を見たことがありませんか。
カラメル色素はカラメル化によって製造される着色料です。
カラメル色素を知っている人は多いでしょうが、カラメル化という反応自体はあまり知られていないと思われます。
そのため、高校生レベルの研究ではカラメル化についての研究が少なく、内容が被りにくいです。
SSH生徒研究発表会やJSECで賞を取ったりと、大きな成果を上げている研究もあります。こういう研究があることは知られていますが、普通に課題研究を調べる際には出てこなかったかと思います。
3.反応が複雑でわからないことが多い
これも前述していますが、カラメル化は様々な反応が起きており、反応機構はよくわかっていません。
反応機構が不明な部分が多いことから、まだまだ多くの研究可能な領域があると考えられます。
先行研究がない研究をやりたい、という方にはぴったりだと思います。
興味を持っている方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
研究例
私個人が知っている/考えた研究例を挙げたいと思います。
1.糖アルコールはカラメル化するのか
糖アルコールというのはアルドースやケトースのカルボニル基が還元された糖のことで、カラメル化しないといわれています。
例えばガムに入っているキシリトールなんかが有名です。
しかし、糖アルコールを加熱することで、カラメルのような物質が生成することが示されたという研究結果があります。
それが、京都府立桃山高等学校の「糖アルコールはキャラメル化を起こすのか」という研究です。
以下に研究の考察の一部を引用しています。
是非リンク先で研究の全容も確認してみて下さい。
「加熱してもキャラメル化しないといわれている糖アルコールが今回の実験で色が変わり甘いにおいがしたため、糖アルコールもキャラメル化するのではないか」
糖アルコールがカラメル化するかしないかを調べる際には、カラメル化した場合にはカラメル化する条件を、しなかった場合にはカラメル化しない理由を探るといいでしょう。
カラメル化するのかしないのかはっきりせず、しないとしても何故しないのかもわかりませんからね。
この研究の欠点として、糖アルコールが研究に必要な材料にもかかわらず、一般的には手に入りにくいことが挙げられます。
2.カラメル化の反応速度について
英語版のwikipediaに、「カラメル化は酸性条件下か塩基性条件下で反応速度が加速される」との記載がありました。
そのため、酸性度を変えることでどれだけ反応速度が上がるかを調べる実験ができそうです。
(普通に考えるとphが中性から離れているほど反応速度が速くなりそうです。)
また、糖蜜のカラメル化では、糖蜜に含まれる不純物が反応速度を加速するとも記載されていました。
おそらく糖蜜に含まれる何かが影響しているのだろうと思い調べてみると、糖蜜には金属イオンが多く含まれていることと、金属イオンもカラメル化反応を促進することがわかりました。
この情報を踏まえて、糖蜜に含まれる金属イオンがどれくらい反応速度に影響を与えるかを調べる実験をするのはどうでしょうか。
糖蜜に含まれている金属イオンを特定し、一種類ずつ金属イオンと糖を混合させ、水に溶かして加熱し、何度でカラメル化するのかを調べるといいでしょう。
あるいは後述する油浴を用いて、ある特定の温度にてカラメル化するまでにどれくらいの時間がかかるのかを調べるのもよさそうです。
加熱する方法として、一番好ましいのは油浴です。
油浴なら温度を一定にするのが簡単で、どの温度でカラメル化したかも決めやすいからです。
油浴が無い場合はガスバーナーやガスコンロを使って加熱し、うまいこと温度を測りましょう。あるいは電子レンジでもいいでしょうね。
金属イオンが影響しているとすると、イオン半径が温度に差異を生じさせる可能性があります。
もちろん、他にも要因はあるでしょう。
さらに、糖の種類を変えてみたり、複数の糖を混合して試したり、糖と金属イオンの比率を変えてみたりといろいろできそうです。
3.加熱時間ごとによるカラメルの違い
上記では温度に注目していました。
ではある温度において加熱時間を変えてみるとどのようなカラメルが生成するのかに注目してみるのはどうでしょうか。
ある温度とある加熱時間で生成したカラメルごとにデータを取り、色、匂いなどに違いがあるかを比較するとよいでしょう。
実はそのような研究結果をインターネット上で見たことがあるのですが、どの研究だったのか忘れてしまいました。すみません。。
確かその研究だと糖単体で行っていたはずなので、「2.カラメル化の反応速度について」に書いたようにpH条件や金属イオンを添加するなどした場合の実験をするのもおもしろそうだと思います。
どの実験にも言えるのですが、どういう状態になったときにカラメル化が起きた(または完了した)と定義することが重要です。
色で決定するのであればRGB値を測定する方法がいいのではないでしょうか。
ここで挙げた例は先行研究がどこかにある可能性があるので、興味のある方は先行研究をよく調べてから行いましょう。
まとめ
カラメル化はまだまだ研究できるテーマが残っていると思いますので是非研究テーマに選んでみてください。