ルシャトリエの原理とは
ルシャトリエの原理とは、ある化学反応が平衡状態にあるとき、ある条件を変化させると、その変化を打ち消すように平衡が移動することを言います。
皆さんは、濃度を増やすと平衡が片方に移動するといったように学んでいると思います。今回は、このルシャトリエの原理を平衡定数を使って解説します。
この際、重要なのは、平衡定数は温度にのみ依存し、温度変化以外では平衡定数は変化しないということです。
まず今回使用する平衡例を挙げます。
という化学平衡の平衡定数は、
と書くことができます。
➀濃度を変化させる場合
のモル濃度を増やすと、その直後はの値だけが大きくなりの値は小さくなります。
しかし、先ほど述べたように平衡定数は温度変化以外では変化しません。
つまりはそのままでなければなりません。
すると値が小さくならないので辻褄合わせをしなければならず、今度はが大きくなるように平衡が移動していくのです。
今回の場合だと左辺のモル濃度が減り右辺のモル濃度が増えるように右側に移動します。
これはルシャトリエの原理そのものですね。
逆にのモル濃度を減らすとの値だけが小さくなりの値は大きくなります。
同様に考えて、左辺のモル濃度が増え右辺のモル濃度が減るように移動するとわかります。
以下基本的には上記のような考え方でいけます。
ルシャトリエの原理とは変化を打ち消すようにというよりは、平衡定数の値を一定にするように平衡が移動するともいえるでしょう。
➁圧力を変化させる場合
圧力を変化させる場合は考えるものが少し増えます。
圧力を増加させると体積が減りますのでその分この化学平衡式のすべての物質のモル濃度が同じ割合で増加します。
この瞬間平衡定数はどうなるのか、適当な数値を代入してみてみましょう。
考えやすくするため圧力をかける前は、、はすべて1だったとします。
(単位略)
このときのは当然1になります。もちろん例えなので実際の平衡定数が1をとるかどうかはわかりません。
ここから圧力を2倍にしたとすると、これらのモル濃度はそれぞれ2になりますね。この数値をもう一度に代入すると、
となり圧力を増やした瞬間は平衡定数が元より小さくなることがわかりました。
あとは➀の時のように考えると平衡は右に偏ることがわかります。
➂温度を変化させる場合
これは平衡定数が温度が上がった際に大きくなるのか小さくなるのかがわからないと説明できませんね。。
ただ問題に平衡定数の温度別数値が記載されている場合だといけます。
おまけ 平衡定数で固体の存在を無視する理由
溶解積などがそうですが、固体が含まれる平衡の平衡定数ではその固体は省いて表記しますよね。
多量に存在する水を無視するのは簡単にわかりますが、少量だけ存在するときもある固体を無視していいのは何故でしょうか。
これは、平衡定数の構成要素の単位はすべてモル濃度だからです。気体だと分圧ですがあれはモル濃度と同じようなものです。
モル濃度の単位表記はですよね。ここで、は体積を表すのでと書き換えられます。またに定数である分子量(原子量)をかけてあげるとになりますね。
つまりです。見てのとおり密度ともいえるわけです。
ここで固体に戻りますが、固体の密度は基本一定ですよね。
よほど圧力を加えたり温度を上げたりでもしない限りは一定になると考えられます。
一定すなわち定数ですので、平衡定数からのけてしまえますね。
そういうわけで固体は平衡定数内に含まなくていいのです。
平衡定数を使った考え方はほかにも平衡の計算なんかに応用できます。是非この機会に習得していってください。