今回はエステル合成反応において覚えておくべきポイントをまとめました。
なぜ濃硫酸を加えるのか
酸触媒を加えないと反応速度が遅すぎて反応が終わらないからです。
濃硫酸でないといけない理由/無水アルコール、無水酢酸(氷酢酸)を使う理由
エステル化反応の反応式は下のように平衡になっていますよね。
R-COOH + R`-OH ⇔ R-COO-R` + H2O
ここで、もし反応前に水が存在するとどうなるかというと、ルシャトリエの原理より平衡が左に偏ります。その結果エステルの得られる量が少なくなってしまいます。
エステルを得るためにやる以上多く得られるようにするのは当然なので、できるだけ水が存在させず平衡を右に偏らせるために無水物を使うのです。
濃硫酸はほかの酸と違い、その濃度が98%と非常に高いので無水に近く(濃塩酸は36%くらい、濃硝酸は70%くらい。)、不揮発性です。触媒が揮発してしまうのはまずいですよね。なので不揮発性の酸であることも必要なのです。
※硝酸を使うとアルコールが酸化されてカルボン酸になってしまうのでなおさら使えません。
アルコールをたくさん入れる
先ほどの平衡で考えます。アルコールがたくさん入っているとルシャトリエの原理より平衡が右に偏り、エステルがより多く得られます。
また、アルコールは揮発性が高いのですぐに揮発してしまいます。還流冷却器である程度は戻りますが追いつかないので、その揮発分を補えるよう余分に加えておくためでもあります。
エステル合成後
反応液を蒸留することでエステルと未反応物の混合物を取り出します。蒸留することで、不揮発性の濃硫酸を取り除けます。
その次に、エーテルで抽出する際に、炭酸水素ナトリウムを十分量加えます。これにより、未反応のカルボン酸が中和されイオンになります。そして水層に溶けるので未反応のカルボン酸を取り除くことができます。
またその時に二酸化炭素が発生するので、ガス抜きをしなければならないです。
次に、エーテル層に塩化カルシウム水溶液を加えます。これはエーテル層のアルコールを水層に移動させて取り除くためです。
アルコールは塩化カルシウムと付加化合物をつくって溶解するそうです。
ですので、ここでは関係ありませんがアルコールの乾燥に無水塩化カルシウムは使えません。
最後に水を取り除くために無水塩化カルシウムか無水硫酸ナトリウムを加え、ろ過と蒸留をして終了です。
このとき、濁りが消えて透明になれば水がなくなったとわかります。
エステル合成反応はよく問われるので重要ポイントを理解し暗記しましょう。